動いている動物の脳神経活動を直接観察する Free Moving Animal, in vivo オプトジェネティクスでは従来、動物の脳神経を観察する目的には、非常に大きな顕微鏡が用いられてきました。それらの顕微鏡は機能も多く、各種観察を行うことはできるのですが、1点、どうしても出来ないことがありました。それは、動物が自由に行動している最中、"Free Moving Animal"、に脳神経の観察を行えない、という事です。大型の顕微鏡を用いた場合、観察部位を固定する必要があり、一般的に観察動物はステージ上に固定されます。そのため、動物の自由行動下、"Free Moving Animal"、での神経活動を直接観察したい、というのが研究者らの夢でした。 それの一つの解として、Stanford大学:Mark J. Schnitzerらが非常に小型で、ネズミの頭に設置できる蛍光顕微鏡を開発しました。その重量は約2gと軽量で、蛍光タンパク質に励起光を照射する光源、脳神経より発する蛍光を観察するためのイメージ素子など、蛍光顕微鏡として必要な機能を全て内蔵しており、観察動物は、顕微鏡を頭に乗せたまま、ケージ内を動き回り、えさを食べたり、回し車に載ったり、自由に行動することが出来ます。小型顕微鏡からの画像信号は、非常に細いケーブルでコンピュータと接続されており、コンピュータで画像処理を行って蛍光発光を観察するシステムになっています。日本では、東北大学の小山内実准教授らが、光ファイバーを用い"Free Moving Animal"の脳神経を観察するシステムを開発されています。"Free Moving Animal"は、現在のオプトジェネティクスの大きな研究テーマの一つとなっています。 Free Moving Animal 動いている動物の脳神経活動を直接観察している様子の動画 ネズミの頭に設置できる蛍光顕微鏡で、動いているネズミの脳神経活動を直接観察している動画です。 小型蛍光顕微鏡で動いているネズミの神経活動を撮影 弊社レンズと、小型蛍光顕微鏡を用いて、実際に動いているネズミの神経活動を撮影したものを以下に示します。本動画は、富山大学大学院医学薬学研究部生化学講座 井ノ口馨教授、獨協医科大学 先端医科学統合研究施設 大川宜昭准教授にご提供頂きました。 CLH-100でネズミの脳内を観察 CLH100(Z~4mm)での脳内観察動画です。 CLE-050でネズミの脳内を観察 CLH-050(8mm)での脳内観察動画です。 “in vivo”イメージングレンズ 従来、脳神経組織などの観察では、脳の切片を切り出してプレパラートなどに固定し、顕微鏡で観察する('in vitro'、生体外)方式がおこなれてきました。しかしながら、自由に動いている動物、"Free Moving Animal"の神経活動の観察は生体内("in vivo")となります。そこで問題となるのが頭蓋骨。頭蓋骨は高散乱体のため、長波長の光源を用いてもその内部を観察することは出来ませんし、組織による光の吸収などにより、当然ながら深い部分を観察することも出来ません。従って、頭蓋骨に穴を開け、カバーガラスなどで置換すると言う方法が用いられる場合もあります。しかし、ここで、化学的に非常に安定なガラスレンズを用いれば、カバーガラス代わりとしての機能も果たしつつ、神経活動のイメージを伝送する媒体、という機能をも併せ持たせることが出来ます。実際の実験では、手術によって、ガラスレンズをネズミ頭蓋骨に固定し、観察のタイミングなったら、顕微鏡本体を接続して観察をし、観察後は、顕微鏡を外します。これによって、ネズミへの負荷を最低限にしています。更に、細く・長いガラスレンズを用いることによって、組織への侵襲を抑えつつ、脳のかなり深い部分の観察を行うことも可能となります。これがMark J. Schnitzerら開発した、小型蛍光顕微鏡の重要なポイントです。 屈折率分布型(GRIN)レンズ このようなシステムで使用されるレンズは、球面により構成された一般的なレンズでは無く、屈折率分布型(GRIN)レンズが、通常用いられます。屈折率分布型レンズは、ガラス内部に持っている屈折率分布によってレンズ機能を発揮しますので、端面が曲面である必要は無く、観察組織表面の画像をそのまま、反対面に映し出します。この画像をCCD等で読み込み、画像処理を行って神経発光を観察します。 このようなレンズの使用方法は、小型蛍光顕微鏡に用途が限定されるわけではありません。レンズを頭蓋骨に固定しておけば、空気中に出ているレンズ面を観察することによって、組織面を観察できますので、どのような顕微鏡を用いても、組織内の観察をいつでも行うことができるようになるという、利点もあります。 小型蛍光顕微鏡方式では、実際に、外科手術によって、屈折率分布型レンズを動物の頭蓋骨に挿入・固定し、観察を行っています。観察領域が浅い場合には、生体への侵襲がそれほど大きくないと考えられますので、できるだけ視野を大きく確保するため、出来るだけ直径の大きいレンズを用いる場合が多いです。それに対して、深部観察の際には、出来るだけ細いレンズを用い、生体への侵襲を最低限に抑える、等の工夫もされています。
それの一つの解として、Stanford大学:Mark J. Schnitzerらが非常に小型で、ネズミの頭に設置できる蛍光顕微鏡を開発しました。その重量は約2gと軽量で、蛍光タンパク質に励起光を照射する光源、脳神経より発する蛍光を観察するためのイメージ素子など、蛍光顕微鏡として必要な機能を全て内蔵しており、観察動物は、顕微鏡を頭に乗せたまま、ケージ内を動き回り、えさを食べたり、回し車に載ったり、自由に行動することが出来ます。小型顕微鏡からの画像信号は、非常に細いケーブルでコンピュータと接続されており、コンピュータで画像処理を行って蛍光発光を観察するシステムになっています。日本では、東北大学の小山内実准教授らが、光ファイバーを用い"Free Moving Animal"の脳神経を観察するシステムを開発されています。"Free Moving Animal"は、現在のオプトジェネティクスの大きな研究テーマの一つとなっています。